ドラゴンの瞳6

「書物を読むことでその作家の性格を読み取ることができる」と学生時代の頃に国語の先生から聞かされていた。確かに自分も幾つかの本を読んでそんな風にも思えた。しかし建築の場合はどのように「建築作品を読む」のだろうか。 たとえば作家が直接計画した作品、資料、文章の他に関係者によるコメントなどは参考になる。また伝記に目を通すのも方法である。できれば直接作家によって書かれたメモ、日誌、小論文のような書物があればそれに勝るものはない。
ガウディの場合は1873年から1879年までに書かれた僅かな日誌がある。現在レウスの博物館に展示されている。他にガウディ死後に出版された伝記が片手で数える程しかない。

その中の建築家ホセ・ラフォルスによるはじめてのガウディ伝記「ガウディ」が1929年に発行されている。この内容は詩的なレトリックでガウディの建築を説明している。他に彫刻家ホワン・マタマラによる未発表のエッセイ「ガウディとの道のり」という1969年にタイプライターによって書かれた書物がある。その内容は日常のガウディの生活と関係者との関わりを描きながらエピソードが豊富に載せられている。他に建築家ホワン・ベルゴスによる1954年の「人と作品」という著書と「ガウディとの会話」では1913年から1923年の間にガウディと交わされた会話がまとめられている。内容は会話文体ではなくガウディの言葉だけがまとめられている。ガウディの死後フランシスコ・パウル・キンターナと共にサグラダ・ファミリア教会の受難の門の継続を管理していた建築家イシドラ・プーチ・ボアダによる「サグラダ・ファミリア教会」(1929年)と過去に残されたガウディの言葉をまとめた「ガウディの言葉」というのがある。それらの原書を覗くと職人達との会話と合わせて職人達によるガウディの感想までも記されている。
現在ではバセゴダ博士が1991年に「巨匠ガウディ」というガウディ辞典とも思えるような585ページに及ぶ本を執筆している。 
私はこの「巨匠ガウディ」を自分の研究課題の一部として2003年2月から2008年8月までの5年間で全訳した。勿論ガウディの奨める献身性からである。彼がまとめたこの資料の中でさらに整理途中で未発表の資料もあるということがわかった。中でもガウディと仕事をしていた請負い業者ホセ・バイヨ・フォントや協力者との話を整理しているが全部を公開しているわけではない。特に他の書物より多く記されているエピソードは、私でもストレートに理解できるほどに面白い。さらに私が実測していたときに見つけた疑問などを解き明かすヒントにもなっている。

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